魔法少女リリカルなのはA's ‐Extra‐

【Episode.2 青石のデバイス】
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7月26日 6:00
鳴海市 桐野家

開いたカーテンの先には、差し込む朝日と快晴の空。管理局勤め最初の朝は、悪くない天候だった。

結城はベッドのほうを見る。
そこにはハルカが、寝息をたてながら眠っていた。どうやら朝は苦手らしい。まだ起きそうな様子はない。

「まぁ、今のうちに着替えちまうか」

さっさと着替え、昨日のうちに準備しておいた荷物を確認する。
そこで取り出したのは、メタリックブルーの石。形自体は、どこにでも落ちていそうな石だが、その輝きからは、何かを感じさせるものがあった。
これが、結城のデバイスである。
父親から受け継いだもの。言い方を変えれば“形見”ということになる。

そのデバイスは、今は何の反応もなく、静かに待機していた。

このデバイスも、結城が管理局入りするきっかけになったもの。
父親のように、このデバイスで助けられる人がいるのなら、自分も誰かの力になりたい。
そんなきっかけをくれた、大切なデバイスだ。

そのデバイスを、結城はポケットにしまうと、時計を見た。

「そろそろかな」

針は6時20分を指している。
なのは達と7時半に公園で集合の約束をしてあるため、そろそろハルカを起こさないとまずい。

結城は、ハルカの体を揺すってなんとか起こそうとする。

「ハルカ、もう起きてくれっ」

少しした後、ようやくその目が開いた。

「……んぅ?」

ハルカはぼーっとした様子でゆっくり体を起こす。
どうやら、まだ頭が働いていないらしい。
5分くらいぼんやりしたあとで、ようやくベッドから降りた。

「おはよう……結城……」

「あぁ、おはよう。そろそろ出発するから、準備をしてくれ」

「ん……」

のそのそと歩き、昨日と同じように結城にくっついた。
結城は頭をぽりぽりとかく。
苦笑して、

「あのー・・・、準備してほしいのですが・・・」

と言った。
が、ハルカは首を横に振る。

「準備するもの、ない……」

「あ、そうか……」

結城はハルカが倒れていたのを思い出した。
特に荷物も持っていなかったし、唯一の持ち物と言えば、あのデバイスだけだ。
確かに用意するものはないに等しい。

となれば、後はすることは一つ。

「なら、目覚ますために、顔洗いに行くか」

「ん……」

こくりとうなずくハルカ。
結城はハルカを連れて、部屋を出た。



「じゃあ、いってきます」

7時、結城とハルカは玄関にいた。
結城は靴を履き終え、もたつくハルカを待った。

やがて、靴ひもを結び終わったハルカが立ち上がるのと同時に、その扉を潜ろうとする。

そんな結城を、見送っていた里見が止めた。

「結城」

「ん? 何、母さん?」

振り向いた結城を、突然里見はそっと抱く。
普段とは違った里見の態度に、結城は多少あわてながらも、嫌がってはいなかった。

「母さん……?」

「無事に、帰ってきなさいね」

夏休み明け前には戻ってくるが、それでも一か月ほど家を留守にすることになる。
それに、“万が一のこと”もある。二度と戻れないかもしれない。
やはり母親は自分の子が心配になるものだ。
夫を失ったことに対するトラウマもきっとあるのだろう。
この子もいなくなってしまうのではないか、という、そんな不安が。

全く――普段はあれだけからかうようなことを言ってくれて。
それでも、結城にとっても、里見は唯一の家族。
不安には、させたくなかった。

だから。

「大丈夫だよ」

はっきりと、その一言を里見に言った。
その言葉を聞いた里見は、ゆっくりと離れる。

「……うんっ。じゃ、いってらっしゃい」

明るい表情だった。

「いってきます」

「ハルカちゃんも、またね」

「ん」

こくんと頷くハルカを見て、里見は微笑んだ。

結城は扉を開ける。ハルカを連れて、家を出た。


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